自動売買やEAで、良いものか悪いものかを見極めるための1つの指標となっている「月利」と言う言葉。
確かに「月利は○○%期待できます」や「今月は月利○○%達成しました!」など数値を明確にしてくれれば、選ぶ側のユーザーにとってみればとても分かりやすいことだと思います。
しかし「月利」と言う言葉を鵜呑みにし、惑わされてしまうと痛い目を見てしまうかも知れません。
今回は、月利の意味と正しい知識の身に付け方を解説したいと思います。
月利とは
月利については今更説明しなくても理解しているとは思いますが、一応解説しておきます。
月利とは1か月単位の利率のことを指している言葉であり、証拠金に対して1か月に得ることが出来る利率の期待値を表しています。
月利の計算方法
☑ 証拠金100万円に対して月利が20%であれば=1カ月間に20万円の利益が期待できる
☑ 同じように証拠金100万円に対して月利が50%であれば1カ月間に50万円の利益が期待できる
☑ 証拠金が200万円で月利が20%であれば1カ月間に40万円の利益が期待できるなど証拠金×利率で求めることが出来る
特にEAをSNSや動画等で宣伝を行い、無料配布している方の多くが「月利は○○%」という言葉を使用している事かと思います。
ですが、月利と言う言葉の裏に隠された真実を見抜けないと、最悪の場合大きな損失を被ってしまう可能性もゼロではありませんので注意が必要です。
続いては、月利の真実を解説します。
月利に惑わされるな!
自動売買やEAを始めて運用する前に一番気になるのが「どれくらい稼げるのか?」と言う事ではないでしょうか?
昨今ではわざわざ提供者に聞かなくても「月利は○○%です!」など大々的に宣伝を行っているので、ユーザーにとっても計算がやりやすいことだと思います。
ですが、公表されているその月利を鵜呑みにしてしまっているのではありませんか?
月利と言っても、確実に毎月同じだけ利率が残せるわけでは無いと、どれくらいの方が理解しているでしょうか?

と反論される方もいらっしゃいますが、私が伝えたいのはそう言う事ではありません。
月利と言う意味に対して、もっと根本的な問題が存在しているのです。
マイナス収支となっている月が考慮されていない
月利が20%や50%と言っても、利率がそれらに満たない1か月もある事でしょう。
それ以外にも、マイナス収支となる1カ月もあるのではないでしょうか?
しかも公表されている月利に対して、マイナス分は考慮されていないケースがかなり多く存在します。
例えば………
1年間マイナスが無い場合
☑ 証拠金100万円に対して月利が20%であれば、1カ月間に20万円の利益が期待できる
☑ 月利20%×12カ月なので、年利だと240%の期待が出来る
☑ 上振れ下振れもあり得るので年間平均だと年利200%くらいに収まる
仮にマイナス収支を出さずに、毎月コンスタントに月利20%を達成できれば、年利は少なくても200%~240%の期待は出来るでしょう。
ですが、どれだけ優秀な自動売買やEAであっても、数年~数十年の間で1カ月もマイナス収支が出ないと言う事はありえません。
おそらく殆どのEAに当てはまる期待値は次のような通りだと思います。
1年間の内マイナスも出ると仮定する
☑ 月利が20%と言われていても、年間に2~3回はマイナス収支を出してしまう月間は訪れる
☑ 例えば1月から順番に月利が18%、22%、25%、-23%、15%、11%、25%、-18%、24%、19%、24%、-22%だとすると年利は120%になる
☑ 今回の場合このEAが公表すべき月利の期待値は年利120÷12カ月なので=月利10%である
上記のようなEAの場合、月利20%と公表していても現実的に期待できる利率はおよそ10%前後だと思います。
どれだけ毎月コンスタントに月利20%を稼いでいたとしても、マイナス分が考慮されていなければ意味がありません。
もちろんマイナス分も計算されていて、月利の期待値を出してくれている方も多く居ますので、運用する前に必ず提供者の方に月利の期待値を聞いてみましょう。
ロスカットの期待値が考えられていない
ロスカットに対する期待と言う、おかしな言葉になっていますが気にしないでください……
つまり何が言いたいのかと言いますと、上記の「マイナス分が考慮されていない」と似ていますが、ロスカットで全損した場合の期待値も月利の計算に含まれていない場合が多いと言う事です。
最近では自動売買やEAを無料で提供してくれる方がとても多くなってきましたが、そのほとんどは「ナンピンマーチンゲールのEA」となっています。
ナンピンマーチンゲールタイプのEAはご存知の通り、レートがある程度逆行してしまっても追加エントリーで損失を相殺し利益を残すと言う手法です。
しかしその性質上、レートが逆行すればするほど多くのポジションと含み損を抱える事になり、最悪の場合口座資金が耐えきれなくなりロスカットされてしまう危険性があります。
この「ロスカットされてしまう危険性」と言う部分も月利の計算に含まれていないケースが多いことでしょう。
「どう言う事?」「何を言っているの?」か分からないと思うので順番に説明します。
まず始めに、ナンピンマーチンEAを運用する場合は必ずロスカットされることを前提で運用しなければなりません。
「優秀なEAだったらロスカットされるはずはない!!!」
と思っている方も多いかもしれませんが、ナンピンマーチンEAは必ずどこかのタイミングで破綻してしまいます。
たとえ過去の相場で破綻していなかったり、稼働のON/OFFをトレーダーが管理していたり、月利数%のローリスクローリターンのEAであっても、ナンピンマーチンEAはいずれ破綻してしまいます。
ナンピンマーチンEAを運用する際は、原資である初期の証拠金額以上の利益を破綻するまでに稼げるかどうかで見極めなければなりません。
では本題である月利とロスカットされた際の利益率を考えてみましょう。
ナンピンマーチンEAはいずれロスカットされてしまうと言っても、それが1か月後なのか、1年後なのか、それとも数年後なのかは分かりません。
ですが1年ごとのバックテストを数回取る事で、EAがロスカットされてしまう確率をある程度見出すことが出来ます。
例えば次のようなEAがあったとして、2011年から順番に1年ごとのバックテストを取ってみます。
2011年
破綻回数1回
2012年
破綻回数2回
2013年
破綻回数4回
2014年
破綻回数2回
2015年
破綻回数2回
2016年
破綻回数2回
2017年
破綻回数1回
2018年
破綻回数1回
2019年
破綻回数1回
2020年
破綻回数4回
2021年
破綻回数1回
※1年ごとの短期バックテストを実施し、破綻した場合は破綻した次の月から再計測を行っています。
例・2020年の6月で破綻してしまった⇒2020年7月から再度バックテスト再開
正直言って、これだけ頻繁にロスカットされても困るかと思いますが、ナンピンマーチンEAの場合トレーダーが管理せず稼働し続けた場合このような事態は十分起こりえます。
具体的なロスカット回数は1年に2回くらいですので、仮にこのEAの月利が20%だとしても⇒
● 月利20%×ロスカットされなかった10カ月=年利200%
● ロスカットは全損なので、2カ月×-100%=-200%
● 稼げた期間とロスカットの全損を計算すると結局利益は残らなかった………
ご覧のように「月利20%」と言われていたとしても、年に2回ロスカットされてしまいますと利益は全く残らない結果となってしまいました。
さらに上記でも何度も言っているように、月利20%だからと言っても毎月同じだけ稼げるとは限りませんので、最悪の場合年間収支がマイナスとなってしまう事も十分に考えられるのです。
つまり月利が20%だとしても、ロスカットされてしまう可能性も考慮して収支を考えなければなりません。
この事を良く知っておかないと……
「利益はこまめに出金しているから大丈夫だ!」⇒「ロスカットされてしまったので利益分から再度口座に入金しよう!」⇒「あれ?EAを運用する前よりもお金が減っているような……?」
と言うような事態にもなってしまうケースがあるので注意しましょう。
月利の知識を身に付けようまとめ
「月利○○%だから、毎月○○万円の収入が増えるぞ!」
などの希望を簡単に持ってはいけません。
自動売買やEAはあくまで投資なのですから、増え続けるわけでは無くマイナス収支となってしまう可能性も考えておく必要があります。
特に運用する前には「そのEA本来の月利の期待値はいくらか?」を計算してから運用すべきなのです。
本当の月利の計算方法は上記でも説明しましたが、もし難しいようであれば「損失よりも利益が上回るEA」を選べばOKです。
例えば、ロスカットはおよそ年に1回とすれば、月利15%くらいであれば元は取れるでしょう。
逆にロスカットされてしまう可能性が年に2回以上あるようなEAですと、月利は最低でも30%以上をコンスタントに稼げるようなものでなければかなり厳しいと言えます。
ちゃんと収益性や年利、さらにマイナス収支の事も考えないと自動売買やEAの運用は難しいでしょう。
まずは「月利○○%!」と言う言葉に惑わされないように、しっかりと正しい知識を身に付けてみてください。
その他、気になる事があれば下記のお問い合わせフォームにお気軽に連絡してください。